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SAROMAN BLUE 鈴木健司

SAROMAN BLUE 鈴木健司

12野辺山ウルトラマラソン完走記~第2章~

50キロ 6時間16分51秒 31分50秒

正面から富士吉田のチームコアの渡辺さんご家族と長田さんの旦那さんが迎えてくれた。渡辺さんはクリニックにも登場するウルトラランナー!長田さんは富士五湖でお世話になっている松頼荘のオーナーだ。奥様が今回の100キロに参加している。『うちのに会いましたか!?』『稲子湯でも見えてこなかったので、どうでしょうか?僕は昨年より遅いんですけど、許容範囲なのでギリギリですが、大丈夫ですよ!6時間30分出発が目安です。』
その後はそば待ち渋滞を横目にプールの水でバンダナとカラダを濡らす。食欲はなく、残りのショッツを飲み干してストレッチしながら出発しようとした。が、写真を撮っていないことに気が付き、戻るとアートのお客様が!まだまだ元気そうです!それからアミノダイレクト5500を飲んでスタートした。休憩時間は約7分。時計は6時間23分を経過していた。
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50キロスタート直後から大きく登ることはない。まずは山間を縫うように集落を抜けていく。比較的広い道になっているので歩道も多く、ランナーもまばらなので走りやすい。58キロまでエイドは途中1ヵ所だった気がする。折り返してきて滝見の湯に向けての分岐点付近だ。
50キロをスタートしたが、ショッツが足りないのかシャキッとしない・・・走れずに歩いてしまう。エイドでそば待ちをしていた合田さんにも早々に追い付かれてしまい、かなりの失速を実感した。とりあえずハニースティンガーのグミを取り出して噛んでから飲み込む。ジェルを固めたものなので、ガソリンとしては問題ない。
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途中緩やかな登りが続き、風景からまもなくエイドではないかと想像したが、なかなか到着しない。途中、おじいちゃん・おばあちゃんの私設エイドがあった。これが有名な『塗ってけおばあちゃんか?』過去2回は気が付かなかったが、ホースからの冷たい水と、となりにベージュの丸められた紙がたくさん並べられている。臭いを嗅ぐとなんだろう?効きそうな香り?とりあえず違和感はないが、左足の足首にCEPの上から撫でてみた・・・特に変化はない(笑)美味しい水を頂き、スタートした。

周りのランナーでは自販機に立ち寄りコーラを買う姿も。それをいいなあ!と思いながらも、今飲んだら全部吐いてしまいそうだと想像する自分もいた。坂を登っていくと前方に右に進むランナーの列を見つけた!分岐点はあそこだ!
到着したエイドでは、ラップで41分を刻んでいた。トイレ小休憩をして45分経過した。エイドの距離を確認すると54キロエイドになっている。ということは、キロ10分近く掛かっているということか。予想以上の落ち込みに気持ちがへこむ。しかし、このエイドの少し先に55キロがあった気がするけどなあ。とにかく58キロには着替えエイドがある!と切り替えてエイドを離れた。

折り返してくるランナーに目をやりながら知り合いを探す。また足元のCEP着用の方を探すのは職業病か?(笑)するとイメージ通りに55キロが目に飛び込んできた。

55キロ 7時間07分16秒 50分25秒

2年前は50キロ~55キロのラップが56分だった。理由は、そば待ち7分おしゃべり10分くらいな感じ。今回は50キロ到着が遅れたので、このタイミングで同じになればいいなと感じていた。結果、50キロ到着時点で16分オーバーしていた分を約10分まで短縮できた。このまま2年前に離されることなく、順調に借金を返したい。55キロから60キロは46分だったので、同じラップでクリアするのが目標だ。
55キロを過ぎてさらに登りが続く。時折僕を知ってくれているランナーが、声を掛けてくれるので歩いてはいられない。いや、今歩いていては駄目なんだ。
折り返して来ての60キロ地点を探す。北相木村は公式では59キロ地点なので、60キロの計測地点を過ぎれば約1キロになる。基本的には登り基調でアップダウンを繰り返しながら下った先から計測音が聞こえてくる。反対側に60キロ地点が見えてきた。もう少し登ればエイドに到着する。ガス欠感もあったので、スペシャルドリンク摂取やポーチの補充に時間を宛てたい。

建物が見えてきた!ここまでのラップは35分。順調に登ってきた感じだが、補給含めて46分のラップは難しいと感じた。まずは補給を疎かにしないで、回復させよう!この時点で、すでにショッツは底をついていたので、アミノ酸だけではエネルギー不足だったかもしれない。
到着と同時に出発するお客様とエールの交換しながら、荷物を受け取った。まず始めに水を貰ってからパイプ椅子に座り込んだ。頭の中で計算する。昨年の71キロは9時間17分くらいで到着し、9時間30分で出発した。今年は現時点で15分くらい遅れて9時間30分くらいの到着になりそうだ。どこでカバーするか。
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それを考えながら、スペシャルドリンクの調合をする!順番はこうだ!
シェイカーの中身を取り出す。水を中に入れる。ショッツとハニースティンガーを入れてゴミは水の入っていたコップへ。ランナープロテインを入れてゴミはコップへ。その後、蓋をして密封にしたらシェイク!シェイク!噛むように飲み干してコップとシェイカーはゴミ箱へ!これで約500キロカロリーだ。
次にポーチの中身チェックする。中身の空っぽになったフラスクを取り出し、ポーチのカラダにフィットする側にベスパハイパー・アミノダイレクト5500・塩熱サプリと柔らかい物を入れていく。そしてサイドの隙間にハニースティンガーのグミとエレクトロライトショッツのタブレットを忍ばせた。これで準備完了!目の前にあるプールで脚を冷やして荷物を預けていざスタート!5分ちょっとではスタートできた感じ。
しかしスタートしてすぐに吐き気を催し、少量だったがもどしてしまった。1度膝に手を当てて、大きくため息。空を見上げて『また来たか・・・』朝からの状態を考慮すればよくここまでよく保ったと言うべきか。実はスタート前からも調子は悪く、戻してしまっていた。固形物は避けていたので、想定の範囲内で回復し歩きだした。まずは60キロまで行かないと・・・。ゆっくりと下り基調のコースを進み、60キロに到着する。

60キロ 7時間57分44秒 50分28秒

ここも50分のラップとなった。もうこうなったら前回の通過タイムはあくまでも前回のもの。今この時をどうやって走るかだ。次の65キロまでは下りが多いコースとなるので、40分くらいでは刻まなくてはいけない。その先は馬越峠の79キロまで、下りはない!
折り返しに向かうランナーと声を掛け合いながらリズムを作る。吐き気を抑える為にグミを舐めながら走る。すると不思議と気持ち悪さはなくなり、走るペースを維持できるようになった。これは2年前の信越五岳で学んだことだ。エネルギーを摂りながらも、胃に負担を掛けずに済む。塩飴やのど飴などでも応用は可能だ。
60キロを過ぎてからエイドはなかなかない。分岐点まで約4キロ。途中地元のおばあちゃん達が温かいお茶を出してくれるエイドを過ぎれば、まもなく分岐点だ。
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そしてコースは一旦緩やかになるが、少しずつ登っていく。公式エイドは63キロと表示されているが、時間的におかしい?63.9キロかな?と思って走り続けると、意外と早くに65キロに到着した。

65キロ 8時間39分13秒 41分28秒

北相木村から出足こそつまずいたが、5キロで見れば順調に回復してきた。貯金こそないが、イメージ通りのラップに満足した。
ここで考察。65キロで約8時間40分。71キロを9時間30分でクリアしたい。あと5キロで50分。間に合うか?この先は68キロにエイドがある。その先はかなりの激坂だ!走っては無理だろう。71キロ到着時間を少しでも早めたいと、気持ちは前に行くが、カラダがついていかない。再びエイドで摂った水分をまた吐き出してしまう。少しずつ登りが続く中で、カラダが疲労してきて胃が受け付けなくなっていく。ショッツだけは欠かさず口に少量だけ含み、グッと飲み込む。またベスパハイパーを取り出し流し込む。ようやく辿り着いたエイドは68キロ地点。いよいよ後半の山場が始まる。

このエイドで声を掛けてくれた方が2人。富士五湖でも山中湖で一緒になったYさんと『鈴木さんですよね!ブログ見てます!』言ってくださったKさんだった。しかし2人の問い掛けに、手の平を向けて制した。
『・・・ごめんなさい・・・さっきからこんな感じで(苦笑)』Yさん『鈴木さん、71キロ9時間30分ですよね。厳しくないですか?』時計は9時間5分を過ぎていた。『3キロを30分ないですね。頑張りましょう!』

僕はカラダを奮い立たせるように、先に見える登り坂に向けて続く平坦をスピードを上げて走りだした。Yさんもそれに着いてきて、先行していたKさんに追い付いた。さらに走り続けると、壁のように立ちふさがる坂道が現れた。
『これは走れないですね・・・。』と僕。しかし、このままでは滝見の湯到着がもっと遅くなる。僕は20メートルダッシュして10歩歩いてはまたダッシュを繰り返した。この激坂で走っている人はいない。僕の300メートルくらいのラン&ウォークを見ていたお客様達が、徐々に走り始めると僕を追い越していく。僕がリミッターだと知ってか知らずか、また僕は集団の後方へ下がっていった。

滝見の湯は71キロだが、今までの経験上70キロの計測地点と71キロは5分くらいの距離にある。本来はもっと手前のはずなのだが、坂道に設置できないからであろう。70キロ計測地点をどのくらいで抜けられるか?それにより滝見の湯到着の見通しがつく。更に坂を登り続けると計測ポイントが見えてきた。と同時に雨が降り出してきた。空を見上げると、暗い雲が立ち込めて雨粒が落ちてくる。全く雨予報はなかったので、不意をつかれたが濡れても気持ちの良い雨だった。降り続く心配はしていなかったので、気にせず走り続けた。

70キロ 9時間28分18秒 49分04秒

70キロに到着!この先あと5分と考えれば9時間35分までは掛からない。なんとか許容範囲ではいけそうだが、この先が更に不安だ。71キロまでも平坦になるのだが、走れる状態ではなかった。こんな状態、顔面蒼白だ・・・。
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71キロゴール地点は9時間33分に到着した。
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9時間30分で出発する計画は無理だが、元々キロ9分残せるための貯金。約30キロあるので、キロ8分で走れればここの出発は10時間でも問題ないということ。さすがに30分は休まないし、馬越峠をキロ8分で登るのは不可能だ。15分遅れの9時間45分に出たとしても、8分30秒で刻めば良い計算になる。(この時71キロ地点なので1キロ分の約8分は貯金だ)

エイドでは何も食べる気力はない。椅子に座りカラダを休ませ、後半の為のショッツを舌に乗せてゆっくりと浸透させていく。雨は強さを増しているが、冷えることはない。また68キロで一緒になったKさんが続いてやってきた。話し掛ける余裕もなく、立ち上がりアミノプロテインを水で飲んでからエイドを離れた。

馬越峠の入口は75キロなので(と思っていたら74キロだった)あと4キロは走れる登りでなくてはいけない。2年前はハンガーノックで進めなかった。今回の方がまだマシか?思い出しては苦笑い。『まったく走れなかったもんなあ』ゆっくりながらも走っては歩き、走っては歩く。周りのランナーよりも明らかに遅く、立ち止まる回数も増える。時々吐き気に襲われてしまう。後ろからやってきたKさんが心配そうな顔で声を掛けてくれた。

雨は降っているが、寒くはない。登りが続き汗をたくさん掻いているので水分は欲しくなる。しかし受け付けない。グミを摂るが甘さが気になってしまう場合もある。でも口に入れているだけでも吐き気はこないし、噛んで飲み込めるので胃に入る。これが後々効いてくるか?

ようやく辿り着いた馬越峠の入口は74キロとエイドだった。これから5キロ登らなくてはいけない。滝見の湯を出発してからの状態を考えると、走れる状態ではなかった・・・。
とりあえず早歩きをイメージして進むがすぐに呼吸が上がってしまう。そしてトボトボと歩くだけに。そして徐々に勾配もキツくなり始め、歩くこともままならないくらい太ももの内側がプルプルと震えだした。歩幅を大きく取ることはできない。少し腰を落として太ももから前に出そうとすると、ビクン!『うぉ!』となってしまう。時折後ろ向きになって歩いてみたり、横歩きしたりするが、練習が足りていない筋力が支えられるわけもなく、すぐに耐えられなくなってしまう。

75キロ 10時間18分25秒 50分07秒

そして馬越峠の途中にあるエイドを目指して進むにも、吐き気やカラダがしんどいので両手を膝に付いて休むしかなかった。途中でKさんや合田さんなどが交わしていく。声を掛ける気力もなかった。なんとか到着した76キロエイド。とりあえず水を貰い椅子を探して座り込んだ。
眠い・・・意識が朦朧となる。長い登り坂を登り続ける練習がまったく出来ていなかった。平地だけでのマラニックではこの野辺山には太刀打ちできない。『もう間に合わないかな・・・。あれだけ立ち止まったし、てっぺんはまだ先だ。』Yさんも追い付いて来てはいたが、すでに目を閉じてフラフラになっていた。でも諦めちゃいけない!行けるところまで行こう!ショッツを流し込んでスタートする。

走ることはできない。また立ち止まり苦しい状態が続く。すると1人のランナーが声を掛けてくれた。『お兄ちゃん!足元のハイソックスみたいなキツいの履いてるから動かないんだよ!脱いだら楽になるよ!俺も途中で脱いできたんだ!』『ありがとうございます・・・脚よりも内臓なんです。何も食べられなくて・・・』『じゃあ飴はどうだい?』『持ってます!ありがとうございます!』『無理しちゃダメだぞ!』少しだけ話しただけなのに気分が少し晴れた。顔を上に向けたのが良かったかな?空から降る雨もいつの間にか止んでいた。

リズム、リズムと思い、走るが3回が限度。また長く立ち止まる。『あの人が言ってたみたいにCEP脱いだら楽になるのかな?』レースでは途中下げたこともなかったので、どうなるかやってみた。始めはフッと楽になったが、1歩踏み出すとふくらはぎだけでなく、腿まで釣りだした!『ヤバイ!』次の1歩で立ち止まり、再びCEPを上げてから動きだすと問題なく歩けた!収穫!『CEPは脱ぐべからず!』(笑)

歩きながらでもようやくガードレールが前方の上に見えてきた!あそこまで行くのか。できることならばショートカットしたかった!しかしそんなことは無理だし進むしかない。時計のラップは50分を過ぎていた。前回ラップは80キロまで下って55分。『一体何分掛かるんだろう・・・』途中でお客様に『調子はどうだい?大分キツそうだな。』と聞かれ『昨年よりも10分くらい遅いですよ・・・』『そうだよな、随分遅いと思ったんだよ!』僕のことをよく知る方だ。それでも僕を置いてしっかりとした足取りで登っていく。
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ようやく拓けた先に峠のてっぺん付近が見えてきた。あそこまで!前日のMCでご一緒した近藤麻智子さんが言っていた桜の木が見えてきた。ここで峠はおしまいだ!やっと着いた!もう動けない!息が上がるなか、エイドでコーラを貰い椅子を見つけて座る。『はぁ~~。キツい・・・』
この先を計算するゆとりはなかった。しかし僕より後にエイドに到着するランナーから、諦めた雰囲気はまったく伝わってこない。ようやく終った登りから走れる下りになることを待ち望んでいた表情と会話が聞こえる。ここの関門は11時間40分。『まだ引き止められることはない。行けるところまで行くんだ!』重い腰を上げて、ショッツとコーラをもう一杯飲んでから下りだした。
登りとは違って足が前に出ないことはない。しかし無意識にブレーキを掛ける走りになってしまい、負担が大きい。80キロ地点までに何度か立ち止まり、走りを修正する。そして下り始めて約8分で到着した80キロ。
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80キロ 11時間29分57秒 1時間11分31秒

なんと5キロに71分!残り20キロで2時間30分しかなくなってしまった。この先5キロ下り・2キロ川沿いの平坦・87キロエイド・3キロ平坦と続き90キロに到着する。90キロからはまた登りが始まるのだ。それを10キロだと1時間15分・5キロだと37分30秒・1キロだと7分30秒で走らなくてはならない。果たして間に合うのか?
90キロまでは走れるコースが続くので、なんとか行けなくもない。しかし80キロを過ぎて下るにもペースがなかなか上がってこない。そこで再びショッツワイルドビーンを投入!心拍数を上げても対応できるように血糖値が下がらないようにしっかり摂った。

そんな中、下り坂を良いペースで下る女性ランナーがいた。まずはリズムを作らなくてはいけないので、5メートル後方に着かせてもらい走るとキロ5分40秒くらいのペースになる。徐々に走り方も前傾姿勢に変わってきて、ブレーキも掛からず呼吸も楽にしながら維持できるようになった。

下りの途中にも1ヵ所エイドがあり、他のランナーは止まらずに先を急いだが、僕は補給というよりはカラダを冷やすために立ち寄り、タイツに水を掛けてスタートした。その後は先程の女性の背中を追い掛けるように加速する。気分は箱根駅伝の6区を下る選手だ!この時にも焦って更にペースアップは考えない。100キロまでカラダを運ばなくてはならないんだから、平坦で走れないことのないように確実に無理のない速いペースで行こうと考える冷静な自分がいた。そして女性よりも自然と前に出るペースになった。

85キロ 12時間02分35秒 32分37秒

実際は表示に気がつかなかったが、ポラール心拍計のデータから算出。まずは87キロまでが一区切りだ。川沿いの約2キロを越えて残り13キロで、どのくらい残せるかに掛かってくる。下りを終えて川沿いに入る。ランナーの人影は疎らで等間隔に走っているように見える。87キロの地点はまだ見えない。前を行く虻蜂さんのウエアが見える。確実なペースで走っているだろうから、あそこまで追い付きたい。2年前はラン&ウォークでクリアしたこの川沿い。キロ8分ちょっとで走れていた。ラスト10キロにキロ9分掛けられる計算はできていた。焦らず走ったその時よりもかなりかっ飛ばして走っている。これは残り10キロに対しての貯金の為だ。

80キロ地点ではキロ7分30秒イーブンという非常に厳しい数字になった。かといってキロ7分30秒で20キロを維持することはできない。イーブンで行くならばキロ7分イーブンで走り30秒ずつの貯金が必要だ。このスタイルは自分には合わない。違う筋肉を使って速く走った方が楽になる。馬越峠を越えさえすれば完走率は90%以上だという。残り10キロの地点で7分45秒~8分までの貯金が欲しかった。

イーブンペースのスタイルの虻蜂さんが大きくなってきた。まもなく87キロ地点。川を離れて左折し住宅地の小道を抜けるとエイドステーションに到着した。時間は?大時計を確認すると13時間13分を刻んでいる。80キロからは2時間掛からずに下りてきた計算だ。

ここは2つ目の着替えポイント。パイプに椅子には腰掛けてそばを食べているランナーなども見られる。『お~回復したか!頑張った頑張った!』と迎えてくれたのは馬越峠で声を掛けてくれた男性ランナーだった。『ありがとうございました!絶対にゴールします!』他にもKさんもいて、少し驚きの表情だった。椅子に座っていたトライアスロンウエアのランナーが『鈴木さんですよね!?ブログ参考にさせて頂いてます!間に合いますか?』『残り13キロですよね。時間は1時間40分だから100分!ということは6.5キロを50分。ここから90キロまでは平坦で走れるので、頑張りましょう!』とKさんと3人の頭の中は整理された。しかしまだ間に合う?ギリギリ?の思いの中、それぞれのペースで行動した。

僕は預けた荷物は使わなかった。いや使えなかった。雨も上がり、走らなくては間に合わない状況。これならばモンベルのジャケットはいらない。ポーチの補充も58キロから詰め替えていたので、十分足りる量が残っていた。スペシャルドリンクは摂りたかったが、残りは13キロだったので我慢した。エイドの方に『ナンバー1749使いません!』と伝えた。時間はまもなく13時間20分を迎えようとしている。その前に90キロへ足を踏み出した!

まずは平坦な3キロ。エイド直後でもあり貯金が欲しかったので、先程までの勢い同様にキロ6分くらいで押していく。走りながら『あと20分で3キロ進めばラスト10キロに80分残せる計算だ。』と確認した。
しかし1キロもしないで歩きだす。後続のランナーはしっかりとした足取りで進んでいく。僕は集団の最後尾が通過してから後ろを追い掛けるように走りだす。瞬間的に走るペースは僕の方が速いが、前に出るとまた後ろから追い越されてしまうので、集団に追い付いたところで歩きだす。そして離れたところで走る。このまま5キロ進めれば同じペースなのだが、遅れるのは僕の方だ。まずは90キロと気持ちを切らさずにいく。

走る住宅の隙間から左側に山が見えてきて、そこを走るガードレールが見えてきた。いよいよ90キロが近づいてきた。あの交差点を曲がれば、90キロが見えてくる。しかしそれは坂の中腹だ。また近付いてみると計測のテントよりも先に90キロの表示が見える。さて、どのくらいの時間で来れたかな?

90キロ 12時間40分30秒 37分55秒

目標の12時間40分ではなんとかクリアしたが、2年前程の貯金はない。これで馬越峠で7分30秒だったところを、8分イーブン・5キロ40分までリカバーしたことになる。下りではキロ5分台で駈け下りた。平坦でも粘った。80キロから90キロを70分でクリアした計算だ。イーブンが理想だ。周りのランナーはしっかりと刻んで来たに違いない。僕のドタバタな走りは僕らしくて良いのかな。などと考えながら90キロを過ぎた。

93キロくらいまではまだまだ登りが続く。2年前を思い出すと90~95キロは46分で、95~100キロを40分で走っていた。ということは、同じ走り方では間に合わないということだ。2年前に渡辺さんとラン&ウォークしたリズムよりも歩きを短くして、走るのは全力で行こうと決めた。
歩く人が多い中を、40キロ速度規制の標識まで15メートル!そして感覚としては5秒くらい歩いてまたダッシュで電柱1本!5秒歩いて1.5本分!ダッシュはまさに50メートル走をやるくらいの速さだ。NEWTONの反発力だけでなく、ふくらはぎを思いっきり使って圧しだす!途中先行していたKさんや虻蜂さんを交わしては、追い付かれる前にダッシュして前を行く。

皆さんは僕がギリギリなのを知っているが、着いて来られるペースではないし、歩いているのも見えるのでイーブンを守っているのだ。それを乱すような走りをして大変申し訳ありませんでした。
案の定、僕のドタバタラン&ウォークは5キロも耐えられず、歩く時間が長くなる。エイドに到着する時点では僕の方がまた後ろになる。気持ち悪さは落ち着き、ショッツを流し込みガス欠を防ぐ。また発汗量が多かったので、タイツは濡らす。

エイドで休んでいる分、走る時にはキロ8分よりも速く走らなくてはならない。少しだけある下りを利用して加速しては、登りで歩きを増やしていく。95キロをゴールの制限時間40分前にはクリアしなくてはならない。苦しみながらも、走れる時はもがいてダッシュした。

時計を見るとまもなく90キロから40分を経過する。しかし前方に95キロの表示が見えてこない。まだか?少し平坦が続く直線の彼方に白い看板が見えてきた。合わせて反対側にはチームコアスポーツの方々応援してくれた。苦しい表情で手を挙げて応えることしかできなかった。

95キロ 13時間21分58秒 41分27秒

う~ん、苦しい!ここからは1キロ表示になる。今頑張るしかない!大きく息を吸い込んで、猛ダッシュ!10秒歩いてまたまた猛ダッシュ!普通に走っていてはキロ8分は掛かってしまう。稼げる時に稼がないと!
下りもありその甲斐あって、ラスト4キロ表示では32分残せたのを確認した。良し!キロ8分!としたが、ここからが一旦下ってから登りが長く続く。虻蜂さんの姿が大きく近づいていたが、登りになってまた離されていく。

そしてその登りの途中に応援する人影が1人・・・中島さんだ!前半のトレイルの登りで調子が悪そうだったが、40キロまでしか走れなかったという。『さすがいつも通り、間に合わせてくるね』と声を掛けて頂いたが、一杯一杯だった。登り切って左折すればあと3キロとなる。

ゴールの会場は目と鼻の先!野辺山駅まで見える。しかしあと3キロ!最後のエイドに立ち寄るランナーはいないが僕は歩きたかったので水だけ頂き、前に進む。ラスト3キロは残り21分になっていた。『はぁ~・・・走れてないぞ。あと20分粘れ!ヨッシャ!』と気合いを入れ直しダッシュ!前方を見てもランナーが右折する姿が見えない。目を右に移してゴールに向かうランナーの姿が米粒のように見える。その列を後ろに辿っていくと、ようやく次のコーナーを曲がった列を確認できたが、自分が曲がる角は見えてこない。あと2キロはもうすぐと思いつつ、なかなか出てこない。そして歩けず両膝に手を当てて立ち尽くす。『はぁ、はぁ、はぁ、キツい~!』声に出して言った。後ろを振り返ってもランナーはほとんど居ない。

遠くにラスト2キロの看板が見えてきた!走ろうにもなかなか脚が進まない。時計は残り15分となっている。走らないと無理だ。なんとか走りだしてペースを上げる。ラスト2キロで14分!止まれないぞ!右折しゆっくりになりながらも走り続ける。90キロ以降頑張った分、ここに来てカラダがいうことを聞かない。あとコーナーは3つ。しかし真っすぐな道が遥か遠くまで続くようだ。時計を見ながら歩いてはいられないと思いながらも、歩いてしまう。1つ目のコーナーでは江戸一RCのコーチご夫妻が応援してくれた!『ほら、あと1キロちょっと!走って走って!』背中を押されるように歯を食い縛ってまた走りだす。

まだラスト1キロの看板は見えないが、苦しくて歩きだす・・・すると後ろからKさんが快調なペースで走ってきた!そのペースなら間に合う!という思いで『ナイスラン!』と手を差し出した。心配そうな表情でこちらを見て先を急いで行く背中を追い掛けた。

ラスト1キロ!すでに13時間54分台を刻んでいる・・・あと6分ないのか!ストップウォッチをペース表示に切り替えてダッシュする。リアルタイムの速度1キロ5分10秒の数字が表れるが、気を抜くと5分50秒になる!またダッシュ!Kさんの背中は小さくなる。

2つ目のコーナー踏切を渡り、『あと600メートル!』の声。間に合わなかったでは洒落にならない!最後のコーナーを過ぎると登り坂だ!平坦のうちに更にペースを上げる!ENEOSの看板が見えてきた・・・。

『あと300!間に合うぞ!』と聞こえた。時計を見るとあと1分だったか?野辺山駅前を曲がると歩道にはたくさんの応援の波ができている。お客様の姿も見えて、『やった~!お帰りなさい!』とハイタッチを求める手が差し出された。何人かには応えたが、カラダを押し戻されるくらいの皆さんのパワーを感じたので、その後はごめんなさい!歯を食い縛って険しい顔で腕を振って駆け上がった!

あと30秒を切ったところでスタートゲートがあった付近を通過!まだゴールのゲートが見えない!『間に合うのか?』もう一段階ペースを上げて走る!そしてようやく見えた明るいライトを見てゴールの位置を確認!最後に歩道からゴールゲートに繋がる赤いカーペットに出た時、目に入ってきたのは『13時間59分55秒』を刻む時計だった!
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最後の最後に更に加速して時計を見るとスローモーションの様に57・58・59と進むのが確認できた。その時に僕はゴールのほぼ真下にいた!やった~!!!間に合った!!!

100キロ 14時間00分00秒? 39分02秒
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と勢い余って転倒!立っていられる状態ではなかった。迎えてくれたのは安田さんと虻蜂さんの2人。大会役員の方に『もう少し下がってください!』と言われたが、這って移動するしかできなかった。
自分の感覚では間に合ったはず!14時間00分00秒でテープを切ったと思われる。実際はどうだったのか?『鈴木さんどうだった!?』と聞かれるばかりだったが『たぶんピッタリです・・・(苦笑)』応援してくれた皆さんが声を掛けに来てくれたが、見つけられない方も多かったようだ。おそらくゴール後に倒れこんでいたからだろう。

それにしても間に合って?良かった。ジャストなんてあり得ない!今までのギリギリ記録は4月の富士五湖での12秒前。それ以前はくびき野の33秒前。サロマ湖の50秒前だった。どちらの大会も絶対に間に合うという若干の安心感を持ちながら走っていたが、今回に限ってはそうではなかった。馬越峠の登りでは諦め掛けた。なんとか気持ちのスイッチを入れ直して持ちなおしたのだ。今回ばかりは間に合って良かった!に尽きる。練習量の少なさを痛感したが、まずは結果として完走ならばそれで良い!内容としては反省ばかりだが、これで富士五湖と野辺山クリアだ!

体育館に戻るとアートスポーツブースは段ボールの山だった。パワースポーツの小林さんも13時間30分くらいでゴールしたというが、着替えを済ませてパワージェルなど片付けに動いていた。
『お、健!またギリギリだったみたいだなあ!』『すいません、なんとか間に合ったと思います。』カラダはクタクタだったので、とりあえず床に這いずりながら着替えを始めた。家族にはここで連絡!HANAが出て『どうだった?』の問いに、『14時間・・・00分・・・00秒でした・・・ギリギリ・・・』子供達と話す気力もなく電話を切った。

レース後に来る『力石モード』は今回も健在!しかし固形物は食べられていなかったので、何も出なかった。この後もカラダを休めれば回復するだろう。体育館からの撤収はランナーが荷物を受け取り会場を後にしてからでないと本格的にはできないので、しばらく時間が空きそうだったので体育館内の自分の荷物を枕に横になった。

しばらく休んでいると徐々にランナーの声ではなく撤収作業の物音が!ハッと気が付くと20時を回っていた。30分くらい休めたかな?軽くなったカラダを起こして、ほとんど終わった作業に合流した。後は御徒町まで戻り荷降があるが、僕はパス。行ったところで使い物にならないからだ。21時過ぎに野辺山を出発し、23時過ぎには御徒町に到着した。この間、中央自動車道に乗ってから神田で降りるまで記憶がない。
十分な休息を取り、帰宅したのは午前0時30分を過ぎていた。洗濯機を回す気力もなく、お風呂でスッキリ!明日は仕事だ早く寝なくては。公式記録が気になってランナーズアップデートを調べると・・・14時間00分01秒となっている。???あれ間に合ってないの?でも速報値とある。修正されるの?一抹の不安を抱えて眠りに就いた。

翌朝は金環日食という一大イベントだったので、パジャマにベネクスベネクスを着て寝ると、朝6時にシャキッと目が覚めた!午前2時30分に寝たのに、カラダは動ける状態になった。
日中にブログで目撃情報を募集すると野辺山にランナーとしても参加していた小嶋さんから写真を頂けた。それが上記のゴールライン上14時間00分00秒のゴール写真だ。ありがとうございました。

その数日後にはオールスポーツさんの写真もアップされて、ギリギリジャストに向けて走り込む姿がバッチリ写っていた。この購入した写真をランナーズウエルネスさんに送り、証拠写真として採用して頂いた。RCチップ計測は変更できないので、約1ヶ月後に送られてくる記録集を楽しみにしたい。
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こちらがオールスポーツで公開された写真!

レース全体を振り返ると、今回は、今回も?食事面で失敗してしまった感はある。前日は販売と説明会トーク3回とバッタバタ!17時から20時の間に3食分食べるかたちとなった。お腹も空いていたので、ただ単に自分で節制しなくてはいけないところを、たくさん食べ過ぎてしまった。さらに夜のバトル(facebookのみで公開!)による寝不足も加わり、朝から絶不調だった。レース中に固形物なしで行くことを決めたのは良かったが、58キロまでにショッツ5本では足りなかったことに後悔。2年前の完走記を振り返ると、7本入れられるソフトフラスクで対応していた。58キロまで残すために45キロ以降は摂取を控えめにして、アミノ酸やプロテイン中心とした。後半に差し掛かってからは、水がなくても飲める『ベスパハイパー』と少量の水で流せる『アミノバイタルプロテイン』『アミノダイレクト5500を2回に分けて』摂取で対応したが、エネルギー不足は顕著に50キロ過ぎに表れた。
63キロ過ぎからは我慢の連続!68キロから79キロまでは、まさに地獄の特訓の様な形で耐えるしかなかった。2年前よりも大きなダメージで馬越峠をクリアしたが、冷静に時間の把握をできたことで、諦めずに走り続けられた。大会前に自分なりの言葉を考えていた!

『気持ちのスイッチを入れ直そう!』

ウルトラマラソンには何が一番必要か?よく聞かれます。もちろん練習量や走力に始まり、シューズ・ウェア・サプリメントに加えて機能性のあるアイテムなどなど、外部的なモノがあることで走れることはあります。
しかし本当に1番必要なモノは、『気持ち』だと、改めて感じました。諦めるのは簡単。走るのはキツい。辛い。止めたい。でも『また行ける!ゴールしたい!』と気持ちのスイッチを入れ直せれば、必ず走れるようになるんです!長い時間動いていると必ず波があります。集中力や体力的にも維持することは難しいです。でもウルトラマラソンに限っては復活があるんです!その時はダメだと思っても不思議と動くことができるようになります。諦めなければ!

2012年チャレンジ富士五湖・野辺山・サロマ湖と続きます。2つをクリアし、残すはサロマ湖だけとなりました。現時点ではおそらく疲れから来たぎっくり腰の影響で、野辺山以降1歩も走っていませんが、状態を良くしてサロマ湖に臨みたいと思います。
12秒前・ジャストときたら間に合わないかも?なんて心配もありますが、まずは80キロ10時間でしっかりとクリアできるようにしていきたいと思います。参加の皆さん!楽しみましょう!

2012野辺山ウルトラマラソン完走記~第1章~


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